旭山動物園。北海道の旭川市にある、日本最北の動物園である。開業は1968年ということで、自分より若干歴史のある、老舗の動物園。その一方、地元民からもさほど注目されず、一時期は閉園まで噂されていたという弱小動物園がここ数年、とにかく人気なのだ。上野を代表格とする動物園は、いろんな動物を見て楽しむという当たり前の役割を担っているわけだが、旭山動物園がユニークなのは、そこから一歩二歩踏み込んで、動物の生態や行動を観測できる「行動展示」に主眼におき、園と飼育員が主体となってそのためのファシリティを揃えたところだという。
この動物園は、うちの田舎から車で2時間ほどで行ける。ちょうど午後に差しかかったあたりに到着。園に入る前に、広い芝生に茣蓙を敷いてちょっとしたピクニック気分を楽しむ。辺りにはトンボが飛び、のどかな昼下がり。食事を済ませて、さあ園に入ろうと入り口へ向かって歩くと、駐車場にある観光バスの数の多さに驚かされる。ここまで話題になる前は地元民が週末に楽しむ場所だったが、今や北海道観光の主要スポットという感じだ。群馬や埼玉ナンバーの自家用車も見受けられる。
入場料は安い。1人580円で中学生以下は無料。年間パスポートも1,000円と破格だ。正門をくぐるとすぐに「ととりの村」と呼ばれる一角があり、そこでは白鳥やフラミンゴが優雅な姿を見せてくれる。旭山動物園で特筆すべき展示のひとつがペンギン館。地上にいるペンギンを見れるのはもちろん、建物の地下は水中トンネルになっていて、水に潜って遊泳するペンギンの姿を観察することができるのだ。なるほど、これが行動展示というものかと感心。それにしても、ペンギンはいつまで見ていても飽きない。
ライオン、トラ、ヒョウなどがいる「もうじゅう館」では、娘も興味津々。その興味関心の中心にあるのは「この動物は恐い?」。大きな猛獣を見るたびに「ライオン、恐い? トラさん、恐い?」と聞いてくる。こっちが「恐いよぉ、がおー」とやると、きゃっきゃと喜ぶ。後々まで「ライオンさん、恐〜い」と言っていたので、かなり印象に残っているんだろう。この日は「ライオンは寝ている」状態だったんだけどね。
次の目玉は、15時から始まったオラウータンの空中散歩。どの動物園もオラウータンの能力を活かすよう、高い塔のような設備が設けられているが、ここでは高い塔が二つあり、その間にロープが張られている。飼育員が高い鉄柵の間にエサを置いて回ると、小さな子供を背中に乗せた母親オラウータンが、見事なほどに鉄柵を登り、自由に移動しながらエサを取っていく。その動きに感心するものの、ハっと下を見ると、娘は意も解さず人ごみの中を自由に移動しながら歩き回っている…。そんなわけで、飼育員の説明も耳に入らず、オラウータンと娘の動きを交互に見ながらで、もう大変。いよいよ父親オラウータンの空中散歩。この様子は、こちらのQuickTimeムービーで。
次に、ゾウやカバなどがいる総合動物舎へ。娘が大好きなキリンはなんと、一ヶ月前に他界していた。残念。その後、北極グマを見に行ったが、ここもペンギン館と同様、遊泳する姿を観察できるようになっている。地下の水槽部分で北極グマが泳いでくるのをずーっと待っていたが、人の多さもあり、泳ぐ姿を見るのは難しいかな? と思っていたところ、隣のほうで大きな歓声が上がった。次の瞬間、見事に真っ白な北極グマが目の前に現れ、娘は狂喜乱舞。その様子を観察し終わると、北極グマは地上へと登っていったのでした。続くアザラシ館も同様の作り。大水槽とつながった円柱の中を遊泳する様子を間近で見られる。
最後にウサギやモルモットなどの小動物に触れられる、こども牧場へ。以前、井の頭公園の動物園では及び腰になってモルモットさえ触れられなかった娘だが、今回は意を決して(?)、ウサギに触れることに挑戦。娘の小さな膝の上に置かれたチンチラは大人しく、娘が恐る恐る手を翳しても微動だにしない。二、三度柔らかな毛並みをなでて、ニマーっとした笑顔でこっちを見ると、もう調子に乗って首や耳を触り放題! 終わった後もしばらく得意満面の様子だった。
一通り見終わって時計を見ると、もう4時。割りと急ぎ足で回った割には、結構な時間が経っていた。ゆっくり見て回れば、半日は楽しめる感じだ。人が多い割には気疲れもせずに楽しめ、なるほど人気があるわけだと納得。極寒の冬はどんな感じになるんだろう? 機会があればまた行ってみたいと思う。
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