ギターを壊すといえば、やはり元祖はThe Whoのピートタウンジェントだろうか。昨年のロックオデッセイでも見事に壊しまくっていたが、衝撃的というよりは、レッサーパンダが直立する程度のお約束芸を観ている感じがした。おお、やった! ありがとう。ほら御捻りあげるよ…ってな感じ。2001年のフジロックで来日したニールヤングが「Like A Hurricane」でギターの弦を全部ブチ切って、それをピックアップにペシペシ叩いている光景のほうが衝撃だったなあ。まあ、これもお約束の芸なんだけど、説得力が違った。あと、ジミヘンドリックスがストラトをオイル塗れにして火を付け、それをブチ壊す映像は有名だけど、イカレてる感はこっちのほうが断然強い。
そうか。イカレてる感が違うんだ。今のピートタウンジェントは1日ギター10本壊したとしても、経済的には痛くも痒くもないだろう。余裕綽々。ニールヤングの場合はギターの弦なんで、値段はしょせん1,000円くらいだけど、延々と爆音ギターソロを弾きまくって、その流れで弦を切って、最後はギターを奇妙な打楽器にしてしまうんだから、やっぱりイカレてる。まあ、ステージ上という非日常な場での話だから、モノの値段は関係ないのかもしれない。
一方、日常の中でのイカレてる感は、モノの値段や価値に十分引っ張られる。僕も一回だけ思い切りぶち壊したことがあるが、何をやったかと言うとNewtonというPDAのはしりだった機械。買った当初は嬉々として使っていたのだが、そのうちだんだん苛々してきて、ある日、みんなで酒を飲んでベロンベロンに酔っ払いながら道を歩いている時、何を思ったかカバンの中にあったNewtonをガバっと取り出して、道に叩きつけた。Newtonは90年中盤のアップルにとって、白昼夢のような革新と挫折の象徴ともいえるもので、(酔っ払いにとっては)挫折の最後を飾るにはちょうどいいケジメの付け方だったように思う。値段にして12万円。いい感じにイカレてた夜だった。朝、目が覚めたときの嫌悪感も一入(ひとしお)だった。
そういえば似たようなエピソードがスティーブジョブズにもあったようで、彼がアップルに復帰した際に20周年記念Mac(スパルタカス)をプレゼントされたそうだが、ジョブズはそれを見るなりオフィスの窓から放り投げたそうな(ホントかよ)。値段にして100万円。なおかつプレゼントされたモノなわけで。人としての器が違うのか? それともこの人にとっては毎日が基調講演の壇上にいるようなものなのか? いやあ、イカレ方が全然違いますなー。
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