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初出:2009年12月22日 08:13

《前回のお話はこちら》

今回は少し昔話をしよう。ランブリン構想を思いつく前に、そもそもTwitterとの出会いというのがある。最初に知ったのは2007年の夏前だった気がする。Bloggerを作った人が新たに始めたビジネスって触れ込みだった。見てみると、ブログでもチャットでもない皆の短いテキストが無造作に脈略なく、めちゃくちゃに並んでいる。「What are you doing?」と聞かれても「Macの前にいます」としか答えられない。机の前でPCに向かっている理由なんて、いくつもないだろう? なんだこのサービスは? とサイトを閉じたのをよく覚えている。

それから数カ月経った2007年7月、USで発売されたばかりのiPhoneを手に入れた。Jailbreakして街中のWi-Fiを掴まえてメールやWebを見始めた。それからまた数カ月経ち、iPod touchが出たばかりの2007年10月。丸の内の街中で、いつもお世話になっている友人のiPod touchをいじりながらお茶しているとき、「Twitterって知っている?」と聞かれた。「あー、何している?って聞かれるだけで、何していいかわからんあのサービスですね」と言うと「いや、これが面白いんだよ」とiPod touchでサイトに繋ぎ「今、丸の内でお茶してる」とタイプ。......そうか! iPhoneやtouchなら「What are you doing?」という問いの答えは無限に広がる。これはそもそもPC向けのサービスじゃなく、皆が移動してなんぼのサービスなんだ...。

そして周りを見回したとき、妄想はグンと広がる。周囲にあるお店がみんなつぶやきはじめたらどうなる? それを歩いている人がiPhoneでキャッチできるようになったら。メールよりも短くて無定形な文章が即座に皆のポケットや手のひらの上に届くようになったら。かつてスティーブ・ジョブズは「Webの勝者になれるのは、"売るモノを持っている"やつらさ」とEコマースの可能性を見据えていたが、確かに売るものがないサービス業は、来店・予約くらいにしかネットを使ってこれなかった。その後にある対話とサービスはネットじゃどうしようもできなかったのだ。考えてみれば、Eコマースだってレジと配送だけであって、対話とサービスでモノを売ることなんてできない。結果、安売りとポイント合戦に終始するだけ。もしかしたら、Twitterは対話とサービスのための基盤になるかもしれない。そんな予感を持ちながら使い始めたのが2007年10月だった。

それから半年以上が過ぎた。Twitterにはのめり込んでいたが、あの時浮かんだ直感のようなものは、すっかり頭の片隅に追いやられて忘れかけていた2008年5月。その頃仕事を依頼されていた東京・大崎にある某会社から突然のターミネート。やり切れない気持ちを抱えながらコーヒーを啜り、iPhoneを弄ってたとき、パパっと閃いた。すべての情報に緯度経度を付けて、「今いる場所」を基点とした情報コミュニケーションがあれば、PCでFlashゴリゴリに作ったサイトこそ価値があるなんてまやかしは通用しなくなるんじゃないか? だってこれからは、デジタルデバイスの形態は星の数ほど広がっていき、すべては小型化、ネットワーク化、オープン化、そしてデバイス毎に最適化されたソフトウェア環境が構築されていくんだから。

これは単なるパラノイアだ。そういう世界が実現するなんてなんの確証もない。でも紙にまとめられずにはいられなかった。その時に聞いていたColdplayの「In My Place」をそのままタイトルにしたドキュメントを作り、前日にNTTドコモ絡みの案件について宿題が出されていた関心空間に送った。

《続く》

※ WIRED日本語版 1996年5月号 p.84より。

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