サンボマスター。いろいろと噂だけは聞いていたけど、まじまじとフルセットを見ての印象は、ハチャメチャやっているように見えて実はかなり上手いバンドだ。ノリによってコード(和音ね)は外れることがあっても、リズムは絶対に外さない。ここが他の若手バンドとは大きな違い。リズムさえ外さなければ、メロディやコードが外れても演奏は成立するわけで、そこをきちんと分かっているな、って思いました。ま、コードの外し方も的確だし、演奏に影響しない程度の激しいアクションだしね。佐野さんは「パンクなヤングラスカルズ」って言っていたけど、まさにそんな感じです。サンボの山口さんは洋・邦問わずのロックおたくだけあって、しっかりロック/ポップ音楽が教養として入っていて、アグレッシブさの演出としてパンクっぽさを気取っているんだろうな、と見ていて思う。
そんなわけで曲も演奏も良いんだけど、あのノリと演出が邪魔して、みんな一本調子に聞こえてしまい、曲そのものの良さが浮き出てこないのは残念。まあ、そこがファンが望むものとのバランスなんでしょうけどね。新曲として演奏した「Very Special」は、今回のセットリストの中でも特に音楽的で、ちょっとファンクな展開もあり、他の曲よりも楽しめました。逆に「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」は、本人が「お待たせしましたー!」と叫ぶほど、会場はブチ切れていなかったのも印象的。ふーん、なるほどねえ。
サンボの演奏は2時間弱あったので、ほぼフルセットなライブ構成だと思うんですが、全体の展開がちょっと散漫な感じがしました。ミドルの曲とかバラードとかないんで、終始あのノリを持続しなきゃいけないし、だからメリハリが付きにくい。歌って踊って、これで大ラスだろーって思っても、その後にまだ5曲くらい続く。これで終わりだー! って叫んだあとに2曲くらい続くってな感じ。もちろんファンは「あの曲も、この曲も」っていうのがあるので楽しめるんでしょうけど、曲を知らないとラストを前にして集中力が途切れますね。
あとね、音がスゴイんですよ。爆音。3ピースかつレスポールJrで、あそこまで爆音にするかってくらい。最後にはボーカルにもディストーションかけて、何言ってんだか全然聞き取れないもんね。アンサンブルを重視するサウンドじゃないから、あれでも良かったんでしょうが、あそこまで爆音にするのって意外と日本人だけ。ロックライブ=爆音って図式が日本では蔓延しているけど、海外のロックって実は全然爆音じゃないんですよ。たとえ3ピースであってもアンサンブルをきちんと聴かせつつ、グルーブを前に出していくってバランスなわけです。ステレオフォニックスなんかそうでしたし、先日行ったベックちゃんのライブもまさにそう。その点は、佐野さんのほうがこなれているので、結果として海外バンドっぽい音になるんです。
順番は逆になりましたが、佐野さんのステージは、基本的には「星路ツアー」の小セット版。「99ブルース」に始まり「約束の橋」「サムデイ」を中盤に持っていき、「国のための準備」をやって、最後はデトロイトメドレーと「アンジェリーナ」という感じです。サンボの若いファン(といってもそんなに若くなく、20代後半〜30歳くらいがほぼ)は「約束の橋」のスローなオープニングを経てあのイントロが鳴ったところで「おぉ」って盛り上がり、「アンジェリーナ」の「今夜も愛を探して」で大合唱になるところは、ちょっとビックリ。逆に「サムデイ」は意外に普通な印象。
直感的に思ったのは、サンボのファンだけあって、ロック的な視点に対してこなれているのかもしれない。そういう意味では、佐野ロックの真髄的な曲をもう少し見せても良かったのかも。でもそこを爆発させるのが次のツアーなわけでしょう。今はそのための種まきなのかな。
最後はなんと『The Barn』から「ヤングフォーエバー」をサンボ+佐野さん+Hobo King Bandで演奏。なんでもサンボの山口さんは、リアルタイムで『The Barn』を聴いてブっとんで、そこから遡っていったんだとか。さすがロックおたく。ロック好きにとっては『The Barn』は奇跡みたいなアルバムだからね。