眠い目をこすりながら見てましたよ。そして、延長戦に突入かあ、こりゃPKまでもつれ込むなあ、なんて思っていたところで、やってくれましたジダンさん。いきなりのヘッドバット。即効レッドカードで、はい退場。ジダンさん残念! ジダンだけにぃー地団駄を踏んでたねえー…なんて思っていたわけですよ。そして金色に輝くワールドカップ杯の真横を、うなだれて通り過ぎていく後ろ姿を見たとき、直感的に思ったね。この人、人生最大の屈辱を受けたんだろうなって。
だって考えてごらんなさい。サッカーでしか身を立てられない人間がその世界に登り詰めて、ワールドカップの決勝戦を終えたら引退するんだよ。つまり自分のアイデンティティが、それを最高に輝かせられる場で、間もなく消えようってしているんだよ。たぶん、両手両足がもがれても、這いつくばっても最後までゴールを狙うくらいの心境だったと思う。
それなのにヘッドバットで速攻退場。人は浅はかな行為だと言うけれど、僕はそんな風に片づけられないんだよなー。その浅はかな行為に及ばせてしまうくらい、自分のアイデンティティなんてぶっ飛んでしまうくらいの屈辱を受けたんじゃないだろうか? これは勝手な想像だけど、自分のことを侮辱されたり、民族や国家のことをバカにされても冷静でいられると思う。でも、たとえばあの場で、自分の子供を汚されたとしたらどうだ? 自分の家族を汚されたとしたら?
……マテラッツィがどんな奴か知らないから、なんとも言えないけどね。でももし自分に非がないとしたら、決勝の場でヘッドバットされたんだから、声高に抗議するだろうに、何も言わないところを見ると、非があるんじゃないかね。そう考えると良かったね、ヘッドバットくらいで。あそこに銃があったら、たぶん脳みそ吹っ飛んでいたと思うよ。
テレビやブログなどで物知り顔な方々が「どんなことがあっても、あの行為は愚かだ」って言うたびにこう思う次第です。何故ジダンがあのような行動に及んだのか、という心理を深く考えることもとても重要なんじゃないかな。海を挟んですぐそばでミサイルをぶっ放している方々には正直憤りを感じますが、平和的解決のためには、相手側の心理を考察することも重要なわけ。