まずここで白状すると、レッチリさんの大大大ファンかって言われると、そーじゃありません。いや、結構親しく接しているのよ。ライブだって初回のフジロック含めて3回くらい行ってますし、アルバムは出るたびに買ってますし。ただね、アルバム毎に「わお!」と「んん?」って反応が分かれちゃうんだよね。今にして思えば『One Hot Minute』(1995)あたりが苦しかったなあ。決してデイブ・ナヴァロが悪いって言うわけじゃないんだけど、なんか袋小路にはまって爆音でもがいているって印象だったなあ。この後で初回フジロックに来ているんだけど、アンソニーは骨折しているわ、台風で5曲しか演奏できないわ、もうボロボロ。この直前にRage Against The Machineが出ていただけに、世代交代!?と思ってしまいました。
しかーし、Rageは解散して、レッチリは復活するんだから、僕の予想なんて矮小なもんですよ。しかもジョン・フルシャンテ復活だもんね。『Californication』(1999)は、アレンジ面などで往年のレッチリテイストを全面に出して復活をアピールしつつ、曲そのものはアダルトオルタナティブ(いわゆるAAA)の領域まで拡大していっているのが、とても素晴らしかった。だから、猛烈レッチリ節というのを期待した人には肩透かしだったかもね。なんつってもCalifornicationだからね。ギターの音だって歪ましすぎちゃいけないし、コーラスワークも重要なわけ。
その後の「By The Way」(2002)は前作踏襲型で、いいんだけどあまり夢中になれなかった。曲はすごくいいのよ。美メロも多いし、幅もさらに広がったって感じがするんだけど、前作のインパクトが強かった分だけ、スタイルの踏襲だけが目立っちゃったのかな。あと、タイトルトラックの「By The Way」の安直さ(猛進ラップ+美メロの掛け合わせ)が鼻についたというのもある。
でぇー、今作なわけですよ。『Stadium Arcadium』。堂々の2枚組25曲ですよ。今どき2枚組って度胸あるよ。頭から最後までブっ通しで聞かれることなんて絶対ない時代だからこそ、1曲ごとのクオリティがシビアに問われますよ。それを知りつつも「どの曲も良すぎて外せない!」という理由で2枚組(それでも絞り込んだらしい)なんだから、相当な自信作なんでしょう。
発売と同時にUSのiTunes Music Storeで購入しまして、朝からiPodで聞いていましたが、素晴らしかった。1曲目の「Dani California」から唸ってしまいましたよ。「わお!」でも「んん?」でもなく、「おぉぉぉ!」って感じ。「Californication」の次に期待していたのは、この雰囲気なんだよね。曲がいいのは当たり前として、バンドアンサンブルが一歩も二歩も進化したのと、スタジオ作としていろんなレコーディングトライアルがされてます。ProToolsの力と言えばそれで終わりかもしれないけど、機械に振り回されることなくうまく使いこなしていると思う。ビートルズが16トラックを手に入れて『Abby Road』のあの音を作ったような感覚といえばいいでしょうか。まあ、あそこまで完成したサウンドにならないところがレッチリさんなわけですけどね。
強いて難癖をつけるとすると、ちょっと聞き易過ぎはしないか? ってのと、ロックの王道的な所に収まりすぎて、彼らがかつてもっていたイカサマ師加減が薄れたかなあっと思う。昔からのファンには「誰でも聞けるバンド」になったのが許せないって人もいるかもしれない。でも、これだけバンドの引き出しが増えたんだから、今度は巧妙に外してくるんじゃない? っつーか、外してきてほしい。前作踏襲型アルバムとして『Stadium Arcadium』は、行くところまで行っちゃったからね。