MWS:今、紐解かれる「佐野元春の'80年代サウンド」の心髄
この対談、相当中身が濃いです。まあ、制作クレジットを見ればバレバレなんで白状すると、この対談の場にいましたし、それを編集もしました。話が専門的という面もありますが、そういった部分を読み飛ばしたとしても、ここで語られている内容はいろいろと考えされられます。まず、オレ達はアナログサウンドの本来のクオリティをきちんと把握していたんだろうか? 昔、CDが出てきた時「レコードよりも高音質」なんてのがセールストークでしたし、取り扱いもレコードよりCDのほうが楽っていうんで、アナログ盤は一気に衰退したわけだけど、高音質っていうのは要するに埃とかで針が飛ぶプチプチノイズが一切ないクリアサウンドということであり、取り扱いが楽といっても、傷ついたCD再生すら不可能になるってのは周知の事実。もちろんアナログ至上主義ではないですよ。アナログサウンドは突き詰めていくと、再生機材はもちろん、部屋の作りだとか、電源・電圧だとか、もうズブズブとはまっていく世界。なかなか一長一短です。
じゃあ、アナログに対してCDは技術的な限界値がはっきり見えているから、音質向上も頭打ちかというと、そうでもないらしい。発言の中で「ようやくここに来て、CDでもアナログの持っていた良いサウンドを再現できるようになってきた」というのがある。CDが登場してから20年以上たってようやくの発言。つまり音質の向上というのは、人間の知恵と努力の積み重ねだってことが、この対談でよく分かります。
…で、これからはデジタル音源が一般的になっていくんだろうけど、これは作り手側が試行錯誤する全然前の段階として、技術が試行錯誤している状態。iTunesが採用しているAAC 128Kbpsが最善かというとそうでもないし、技術革新(圧縮、回線帯域、HDDの容量などなど)が進むことで、ロスレス圧縮が現実的な選択肢に入ってくるだろうし、もしかしたらもっと良い圧縮技術が生まれるかもしれない。ギガビットネットワークが一般的になって、iPodの容量が300GBとかになるかもしれない。そうなったら、圧縮する必要ないじゃんってことになる。
まあ、そんなことをツラツラと考えつつ、今日の本題は紙ジャケ・リマスター化された80'sカタログについて。そう、大人買いで全部一気に手に入れてしまいました。普段のように、CDを買ってケースからディスクを出して、(音というよりも)曲を聴いて、ブックレットをパラパラ見てお終い…というものではない、非常にこだわりの商品となっています。
BACK TO THE STREET (1980)
Heart Beat (1981)
SOMEDAY (1982)
No Damage (1983)
VISITORS (1984)
Cafe Bohemia (1986)
HEARTLAND (1988)
ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 (1989)
※以上、リンクは全部Amazonのアフェリエイト(…と潔く書く)
まず紙ジャケが凄い。いや、紙質が凄いとか、漆塗り&沈金仕様とかそういうことではなく、たぶんこれは当時の版下を元にゼロから起こし直したんじゃないかって思える部分が多々ある。逆に『VISITORS』なんかは写真製版っぽいので、当時の版下がなかったんだろうな。そんなことを思いながら見ていると、当時のジャケット周りをCDサイズで完全再現するというソニーミュージックダイレクト(企画・制作)のスタッフの心意気が天晴れ! ハレルヤ! と思えてくる。
おわっ、まだ本論に入る前に激しく長文。ゆえに翌日に続く。