iTunesで「最近追加した曲」というスマートプレイリストを見てみると…
いや、全然後ろめたいことなんかないですよ。どっちかというと「上等!」って感じですよ。後日別エントリーで書きますが、オーディオにいろいろ手を加え終えたところですが、やっぱり昔の録音のほうが俄然サウンドとして気持ちいいんですよ。これはPro Toolsの問題というよりも、原盤制作に金をかけない(=生音録音が重要視されない)風潮に原因がある気がする。リスニングスタイルもiPod+イヤフォンか、クラブ+爆音かって感じになってくると、たしかに繊細な音作りってのは軽視されるかもしれんなあと。
そんな中、いろんな人に「これ、お薦めよ」と新しい音楽を教えてもらう機会があり、そういうのはとても貴重なわけです。で、最近入手した中のひとつが「MGMT」。2005年にブルックリンからThe Managementとしてデビュー、MGMTに改名後の2008年にブレイクしたバンドです。うちの音楽の師匠が「最近のお気に入りなんだよ」と教えてくれて、その場で一曲聴かせてもらったのがアルバム『Oracular Spectacular』の一曲目「Time to Pretend」。もう聴いた瞬間に「お!これはリップスか?!」と思ったくらい、いい感じのひねくれサイケポップ。アルバムとおして聴くと曲毎にムラがあるし、YouTubeでライブ映像を見ても今ひとつ抜きん出た何かが少ない気もするけど、Pro Toolsを与えて新しいロックを作れって言ったら、こんなのが出てきたという好例という感じがする(故に音はそんなに良くない)。
次に入手したのが「TV on The Radio」の3rdアルバム『Dear Science 』。MGMTと同じくブルックリンのバンドで、音楽はよりダンサブルな感じだし、音楽の多様性という点ではMGMTより長けていると思う。でもこの二バンドには、共通点がやたらと多い。両方のバンドの曲の間奏16小節とかを切り出し、並べて聴いたら同じバンドが作ったサウンドに聞こえますよ。そうこう考えてるとつくづく思うのが、The Flaming Lipsが20年近く続けてきた実験は、とても大きな功績だったんだなあってこと。やはり、ああいう風に25年もブレずに新しいサウンドを追求しているバンドは貴重だし、後に続く人たちにとっても幸せな存在なんでしょう。日本のロックにそういう存在が少ないのが残念でならない。
さて、本日リリースされましたのが、我らがU2の新曲「Get On Your Boots」。 3月に発売される新作『No Line on the Horizon』からの先行トラックです。日本のiTunesでも購入できますが、僕はiTunes Plusでしか買う気がしないのでUS iTunesから先ほど購入しました。購入前に、U2.comでフル試聴ができるってんで早速聴いたんですが、イントロが鳴った瞬間にもう笑いましたね。The White Stipesじゃん!っと。エッジがジャックホワイトのことべた褒めしていた記事を前に読んでましたが、まさかここまで惚れ込んでいるとは。イントロ後もトランスっぽいバックトラックにボノ流のトーキングブルース(まんま Johnny's in the basement, Mixing up the medicine♪)なボーカルが乗っていくという、U2としてはたしかに新しい感じ。でも前評判にあった「新しいロックを作り上げた」というのは些か大袈裟じゃまいか?
The White Stripesが凄いなって思うところは、ブルースロックを一度すべて解体し、ギターとドラムという極小構成で再構築する、その妙技の凄まじさ。いい加減ネタ切れになるだろうと思うんだけど、どんどん発展していくことで、下地であるブルースロックにまったく違う側面が見えてくるのが、The White Stripesにずぶずぶハマってしまう理由なんですね。で、今回のU2もブルースロックの解体&再構築をやっているんだけど、トランスとか引っ張ってくるあたり、今ひとつスタイルから脱していない。The White Stripesが引き算の美学だとしたら、U2の新曲は微分法で解析していってる感じかな。まあ、U2は昔からそういうバンド(特にエッジが)だから、ある意味正常進化とも言えるんだけどね。ひとつだけ明確に残念なのは、U2ならではのメロディを封印しているところ。これは新作すべてを聴かないと何とも判断できないことだけど、グルーヴに走るあまりにメロディを封印するケースが最近どうも多いように思える。ボノやノエルのような極上のメロディメーカーがそれをやっちゃイカンと思うよ。神様からの贈り物を粗末にしちゃ罰あたるぞ。
ちなみに『No Line on the Horizon』(線のない水平線)って初めて聞いたとき、いったい何の禅問答だって思ってましたが、ジャケットアートワークに日本画家を使うなど、ほんとに禅の精神に突入しているのかも? 何はともあれ、早く聞きたい…今すぐ聞きたい…。