恵比寿ガーデンシネマで、久々に映画を観る。「再会の街で」という“9.11以降”を題材にした映画。原題は「Reign Over Me」なので、ロックファンには当然、The Whoの『四重人格』に入っている「Love, Reign Over Me」が真っ先に思い浮かぶはず。はい、この映画のテーマ曲もそれです。ストーリーなどはこちらの公式サイトを見たほうが良いので、そちらに任すとして、見ている最中、見終わった後などの印象・感想をつらつらと書きますよ。
- 舞台は現在のニューヨーク、9.11以降の“日常”を追うという映画の性質上、映像はそれほど派手になるわけもないのだが、街の風景ひとつひとつがにくいくらいに上手く撮れている。カメラアングル、奥行き感、色の感覚など、自然だけど上手い。本編の前に「人のセックスを笑うな」の予告編が流れたけど、非常に平面的でのぺっとした絵だったから、なおさらそう思ったのかも。
- 主人公のひとり、チャーリーが普段乗っている立ち乗りスクーター、ほしい。「ゴー・ペッドGTR」というやつだそうで、映画では二人乗り用に改造してある。
- 精神に疾患をもつ主人公、人とのコミュニケーション、そんなテーマの映画にロック音楽が使われるのは、まあわりと昔から。それこそThe Whoの『トミー』なんてものもあるし、最近では『アイ・アム・サム』なんかも良い映画だった。この『再会の街で』も負けず劣らず、ロックがうまくストーリーに絡んでいて、心地よい。プリテンダーズの下りはグッド。スプリングスティーンも『The River』をチョイスしたのが良いセンス。
- チャーリーが使っているミュージックプレーヤーはiPodで、ヘッドフォンはBoseのQuiet Comfort 2。外界遮断というのを暗に表すためにノイズキャンセリングヘッドフォンを使うあたりの細やかな配慮が良いね。
- 劇中テーマ曲となっている「Love Reign O'Er Me 」を聴いていて、なんかThe Whoと違う感じだなあ、なんかエディベーダーっぽい声だなあ、なんて思っていたら、なんだいパールジャムがカバーしたバージョンだったのか。なんでも監督がエディにオファーしたんだけど「The Whoの名曲をカバーするなんてとんでもない!」と断わり、監督とロジャーダルトリー自らがエディを説得したという逸話あり。
- で、映画の最初から最後まで、ずーーーーっと気になって気になって仕方がなかったのが、チャーリー役のアダムサンドラーはディランにソックリじゃないか。
髪型、鼻の形、無精ひげ、垂れ目、なにもかもそっくり。外見だけじゃなく、喋り方も似させていると思うんだよね。で、それがチャーリーという役どころにぴったりマッチしていると思うのです。いやあ、ビックリした。
- で、最後に。ここ数年の映画の多くは、9.11の衝撃やテロとの戦いをテーマに描いていた。それは「現実は小説より奇なり」じゃないけど、映画にするのに格好の題材と言ったところだったんだろう。でもこの映画で、ようやく9.11という出来事をきちんと対象化できるようになってきたんだと思う。最近流行りのドキュメンタリー映画じゃなくストーリー映画であることも重要。ストーリー映画でありながら、制作にあたって遺族会とミーティングしたりとか、そういうきちんとしたプロセスが行われたと聞いて、6年かかってここまで来れたんだな…と感慨深くなりました。