KenG Blog

ようやく登場しました、赤いiPod。ボノが2006年1月に立ち上げたProject REDに賛同する製品であり、今年の春くらいからボノは「Project REDへの参加をアップルに呼びかけていて、ジョブズから前向きな返事をもらっている」と言っていたので、発売されることは既定路線でした。結果的には、iPod nanoに着色できるよう酸化被膜処理されたアルミニウムボディが採用されるのを待っての登場となったわけです。

巷では「赤いiPodだ。通常より3倍速いのか」と、これまたベタベタな声が飛び交っていますが、それはそれとして、うちは真面目にボノがやっている政治活動について、知っている範囲、覚えている範囲でまとめてみましょう。

ボノといえば、今年も受賞しませんでしたけど、ここ数年はノーベル平和賞の候補に上がるほど直接的な平和活動を行っていて、一定の成果も上げています。各国の政治家、首脳陣と直接会い、貧困の構造を変えていくことを訴え、ブッシュとは大統領執務室の中で大喧嘩したり、シラク大統領をオナニー野郎呼ばわりするなど、そのやり方は相当アグレッシブです。

日本人に限らず多くの人たちが「金持ちロックスターが自分の稼ぎを寄付しないで、スタンドプレーするのは売名行為だ、この偽善者め!」っと言いますけど、僕なんかはそういう人たちには「くそくらえ」と言うだけです。それぞれの立場がやるべきことを考え、実践すればいいんです。まずは行動に出ろ。もしその時間が割けないなら金を寄付すればいいし、実際に何かのアクションを起こさなくても、問題に対して意識的になるだけでも十分な価値があるわけですよ。

…で、ボノはこの10年くらいでしょうか、先進国に対して途上国の債務を帳消しにすることを訴えてきており（ジュビリー2000）、その後はDATA（Debt, Aid, Trade for Africa＝負債・援助・アフリカのための貿易）という組織を設立してます。さらに2005年に行われたG8サミットで、

• 途上国支援の拠出額を倍増すること
• 債務を帳消しにすること
• 公正な貿易ルールをもたらすこと

という声明に盛り込ませるための活動として「LIVE 8」なるイベントも行いました。それと同時に掲げたのが「ONEキャンペーン」です。はい、まずはこれが重要。

ONEキャンペーンは、エイズや貧困を無くすためには“募金ではなく意志を表明することこそが大切である”という理念であり、日本でも流行ったホワイトバンドは、その意思表明の具体的な形として位置づけられてます。ホワイトバンドの収益は寄付に回されるわけではなく、ONEキャンペーンの継続的な教育と認識のために使われます。「LIVE 8」も単なるチャリティーイベントではなく、人々に対して意思表明を促すことを目的としたイベント。そこがかつての「LIVE AID」の失敗を目の当たりに見たボノにとっての、大きなラーニングなんでしょうね。

さらに、この方法論は「LIVE 8」だけで終わらず、U2のVertigo Tourでは「One」を演奏する際に、ボノが長い時間をかけてONEキャンペーンの理念を説明（YouTubeで見れます）し、会場にいるオーディエンスに携帯電話を使って意思表明してほしいと訴えるなど、考えは一貫しています。たぶん12月の来日公演でも行われるでしょう。いや、やってもらわないと!

繰り返しになるけど、ONEキャンペーンは寄付を目的とした活動ではなく、その理念を広めていくもの。ボノは「結局のところ、政治家が動かないと貧困の構造は変わらない。政治家を動かせるのは、その政治家を選んだ人々だ」という趣旨の発言をよくするけど、この考え方が彼の根本にあるんでしょう。だからこそ、一挙手一投足が世間から注目される自分の立場を利用して、分かりやすい政治活動を続けているんだと思います。

その一方で、Project REDは直接的に寄付金を募ることを目的とした“ブランド構築プロジェクト”なわけです。ボノは以前、雑誌インタビューで「これからの時代、寄付を集めるためには理念と同じくらいマーケティング力が必要」といったような発言をしていて、ブランディングに長けた他社と共にREDの活動をしていくことを公言していました。

その活動は、英国インディペンデント誌の1日編集長をはじめ、GAP UKからはRED Tシャツ、アメリカンエクスプレスはUK限定でREDカードを登場させてます。このカードについてボノは「アメックスのカードといえば、その色は所得を示すものだったけど、REDカードは自分の考えを示すものだ」と言っていて、この発言はREDとは何なのかを読みとる分かりやすい例ですね。日本でもREDカードをやらないと。

その他にエンポリオアルマーニ、コンバース、モトローラなどとコラボレーションしているし、たしかマイクロソフトやNikeなどとも話をしているはず（違ったかな?）。

散々長くなりましたが、今回のiPod nanoも上に書いたような考えや行動の延長線上にあるものです。赤いiPod nanoを買う時、もしくは買った後、これにどういう意味合いが込められているのか、少しだけ知っておくべきだと思うわけです。

ちなみにボノは自分の政治活動をバンド活動とシンクさせている部分はほとんどありませんよ（前述した「One」のMCくらいかな?）。U2の他のメンバーも、100%ボノの政治活動を支持し、支援しているというわけでもない。そこは身内だからこそ苦労する部分がいろいろとあるんでしょう。他のブログサイトなどで、U2の活動の一環…なんて紹介のされ方をしていたので、それは違うぞって、ここで明記しておきます。